愛用のカメラが高画素機のEOS R5 Mark IIということもあって、RAWで撮影すると1ファイル40〜60MBとサイズが大きめ。あっという間にバックアップ用のストレージが埋まっていきます。
そこで気になったのがC-RAW形式での保存。たしかEOS Rシステムとともに登場した記録形式で、通常のRAWよりもファイルサイズが小さいというもの。EOS R以前は、画素数を落としたM-RAW、S-RAW形式があったような気はしますが、このC-RAWは画素数そのままの圧縮RAWだったはず。
ただ、キヤノン公式を探してみても、
ファイルサイズを抑えられるC-RAW記録
RAWだけでなくC-RAWでの記録も可能。ファイルサイズを抑えることができます。
- ※画質はC-RAWよりRAWの方が優れています。
- ※RAWからC-RAW、C-RAWからRAWへの変換はできません。
- ※RAWとC-RAWの同時記録はできません。
C-RAW対応機種ごとにこの程度の記載(上記はEOS R5 Mark IIの特徴ページより)しかなく、詳細な説明は特にありません。調べてみたところネット上では以下のような認識のようです。
RAWとC-RAWの違い
項目 | C-RAW(.CR3) | RAW(.CR3 / .CR2) |
---|---|---|
圧縮形式 | 非可逆圧縮(Canon独自の軽量化処理) | 非圧縮 または 可逆圧縮 |
ファイルサイズ | 小さい(40〜60%程度に圧縮) | 大きい(30MB〜50MB超) |
画質 | 視認上ほぼ差はないが一部データは削減 | 最高画質(全データ保持) |
編集耐性 | 高い(RAWに近いが若干落ちる) | 非常に高い |
対応ソフト | 同上(.CR3形式に対応していれば可) | Canon純正ソフト、Adobe製品等 |
処理速度 | RAWより処理が軽い | 高性能PCが必要になることもありえる |
C-RAWのメリット
- 保存容量の節約
1枚あたりのファイルサイズが40〜60%程度に圧縮されることがあります。大量撮影時のストレージ節約に大きな効果があります。 - 現像処理が高速
LightroomやDPP(Digital Photo Professional)などでの読み込みや現像が若干軽快になります。 - 画質は視認上ほとんど同じ
通常の使用では、A3プリントやWeb用途において差を感じることはほとんどありません。
RAWのメリット
- 最高画質・最大情報量
非可逆圧縮のC-RAWに比べ、センサーからの情報をより多く保持しており、極端な露出補正や色調補正にも耐えやすいです。 - プロフェッショナル用途に安心
商業印刷、大判出力、極端な編集が想定される撮影にはRAWの使用が推奨されます。
C-RAW運用に変更しても問題なし?
“画質はC-RAWよりRAWの方が優れています。”という一文が気になりますが、ファイルサイズが大幅に小さくなるのはうれしい限り。
ファイルサイズの違いを検証
というわけで、まずはファイルサイズにどの程度の違いが出るのかを比較してみました。
撮影カットは、要素が少なめのphoto01と要素が多めのphoto02の2パターンでテスト。
絞りをF5.6固定とし、ISO100〜ISO51200まで感度を1段ずつ変えながら10カットをRAWとC-RAWで撮影します。露出を合わせるため、感度に合わせてシャッタースピードは1段ずつ上げました。
結果は以下の表の通り。
形式 | photo01 (MB) | photo02 (MB) |
---|---|---|
RAW (ISO100) | 37.2 | 37.83 |
C-RAW (ISO100) | 12.61 | 12.45 |
RAW (ISO200) | 40.43 | 41.04 |
C-RAW (ISO200) | 15.44 | 15.26 |
RAW (ISO400) | 44.15 | 44.73 |
C-RAW (ISO400) | 19.18 | 18.88 |
RAW (ISO800) | 45.98 | 46.52 |
C-RAW (ISO800) | 21.11 | 20.81 |
RAW (ISO1600) | 49.55 | 50.06 |
C-RAW (ISO1600) | 24.68 | 24.47 |
RAW (ISO3200) | 53.49 | 54.01 |
C-RAW (ISO3200) | 28.6 | 28.47 |
RAW (ISO6400) | 57.83 | 58.37 |
C-RAW (ISO6400) | 31.1 | 31.1 |
RAW (ISO12800) | 63.18 | 63.61 |
C-RAW (ISO12800) | 32.61 | 32.51 |
RAW (ISO25600) | 68.5 | 68.89 |
C-RAW (ISO25600) | 34.12 | 33.98 |
RAW (ISO51200) | 73.31 | 73.76 |
C-RAW (ISO51200) | 35.45 | 35.43 |
以下はわかりやすいように表をグラフ化したものです。
RAWに比べC-RAWは、低ISOで1/3程度、高ISOで1/2程度のファイルサイズとなりました。感度の上昇によってファイルサイズの減少率が下がるのは、高感度ノイズは圧縮されにくいということですかね? それでもファイルサイズが半分以下になるのは悪くないです。
今回のテストでは、RAWの場合は要素の少ないphoto01よりも要素の多いphoto02のほうがファイルサイズが大きいのに、C-RAWではそれが逆転していました。これはおそらく、C-RAWがJPEGのような非可逆圧縮を行うため、被写体や構図の違いによってファイルサイズが変動するためでしょう。photo01よりもphoto02のほうが圧縮しやすかった、ということだと思います。
画質の違いを検証
ファイルサイズが小さくなったとて、画質が大きく劣るとしたらRAWで撮影する意味がなくなってしまうので、どのくらい違いがあるのかを比べてみます。
普段使っているLightroom Classicでの確認になりますが、現像前は正直ほとんど差がわからないレベルでした。よくよく見比べると、C-RAWのほうが若干解像感が乏しい部分があるかなあ。下の画像はISO100で撮影した現像前の写真を比較したものですが、明るいところから暗いところにかけてのグラデーション部がわずかにのっぺりとしているような気がします。ただ、800%まで拡大するとわかるかなあレベル、スクリーンショットだと同じに見えるかもしれません。
C-RAWはRAWに比べてデータ量が少ないということで強引な現像をした状態でも比較してみます。下の画像はISO100で撮影し、Lightroom Classicで露光量を3段分上げた写真を1600%で比較したものですが、解像感が劣っていた部分が目立つようになった気がします。が、こちらもスクリーンショットではわからないレベルかな……。
ちなみに白トビを抑える(露光量を下げる)場合には、黒潰れを持ち上げる(露光量を上げる)ときほど現像による影響が感じられませんでした。同様に色被り補正もあまり影響はなさそう。
このほか高ISOの写真でも比較してみましたが傾向としてはほぼ同じ。C-RAWはグラデーション部の解像感がRAWに比べると若干弱いような印象を受けました。
まとめ:基本的にはC-RAWで問題なしか
様々なシーンでテストしたわけではないので断言はできませんが、画質的には正直見比べなければわからないレベルの違いかつ、見比べてもほとんどわかりません。また、現像(レタッチ)耐性もそこまで変わらないような気がするので、C-RAWでの運用は問題なさそうだということがわかりました。
画質面がほとんど変わらないのであれば、ファイルサイズが半分以下になるのはかなりありがたいところ。基本的にはC-RAWで運用しつつ、ここぞというときはRAWにするというのが良さそうです。
願わくばRAWとC-RAWの同時記録ができるようにしてくれたら保険が効いていいんだけどなあ。