ソフトバンクグループは2025年5月13日、2025年3月期の通期決算を発表しました。持株会社としての投資損益が大幅に改善し、4年ぶりに最終黒字へ回復。ただ、その成長持続性には評価益依存という構造的な課題も浮き彫りになっています。
決算ハイライト
- 売上高:7兆2,400億円(+7.2%)
- 親会社株主帰属当期純利益:1兆1,533億円(4年ぶり黒字転換)
- 2025年1–3月期(4Q)純利益:5,170億円(+124%、市場予想▲269億円 → 大幅上振れ)
- 投資損益(通期):+3兆7,000億円
- Vision Fund 1:+9,400億円
- Vision Fund 2:-5,260億円
- 年間配当:44円/株(中間22円+期末22円)
決算ポイント
- 評価益主導の黒字回復
T-Mobile US・Deutsche Telekomなど成熟通信株の含み益とVision Fund 1後期ステージ銘柄の再評価益が寄与し、通期で3.7兆円の投資損益を確保。Vision Fund 2の-5,260億円を相殺して4年ぶりの最終黒字を実現しました。 - ポートフォリオ二極化の鮮明化
Vision Fund 1は高評価益で好調を維持する一方、Vision Fund 2は依然としてアーリーステージ投資の減損が続き、収益構造のリスク・リターンの振れ幅が明確化しています。 - 成長投資への資金余力確保
孫正義氏が掲げる「Project Stargate(AIインフラ計画)」向けの大型投資に備え、必要資金を確保。Arm関連施策やAI半導体開発の進捗が次期決算の焦点。 - 26年3月期業績予想見送り
翌期の連結業績予想をに関しては「不確実性が高い投資環境を鑑み、開示を控える」との判断を示しました。特にAIインフラ向け大型投資や世界的なマクロ動向が不透明であるため、数値予想よりも事業状況の説明に重きを置いた形です。
投資家向け実務チェック
観点 | モニタリング項目 | 留意点 |
---|---|---|
収益の質 | 投資損益 vs 営業キャッシュフロー | 評価益に依存しない営業CFの安定性を確認する |
Vision Fund 2のリスク管理 | 減損額・IPO/売却進捗 | 四半期ごとの公正価値と減損水準を追跡 |
AI×Arm戦略 | Arm株価動向・追加増資計画 | 資金使途と回収計画の具体性を資料で精査 |
株主還元方針 | 配当性向・自己株買いペース | 成長投資優先の姿勢継続に留意、インカム投資家は慎重に |
今後の展望
- 次期決算の焦点
Vision Fund 2の損失縮小と新規IPO/売却による利益化進捗が鍵。 - AIインフラ投資の具体化
Project Stargateの資金投入スケジュールとArm関連開発の収益化シナリオが明確化するかに注目。 - マクロ環境リスク
世界的な金利動向やドル円為替レートの変動が含み益に与える影響を見極める必要があります。
まとめ
通期黒字復帰は投資ポートフォリオの評価益によるものであり、営業基盤の劇的な強化ではありません。しかし、AI×Arm戦略を推進するための資金余力確保という見方も可能。評価益のボラティリティを許容しつつ、Vision Fund 2のリスク低減策とAIインフラ投資の収益化シナリオを慎重に見極めることが重要になりそうです。
Source:ソフトバンクグループ